【参加レポート】参加型オープンデータで日本を元気にするシンポジウム
2015年9月26日、慶應義塾大学三田キャンパスにて「参加型オープンデータで日本を元気にするシンポジウム」が開催されました。本イベントの様子を実行委員の生島高裕さんに寄稿していただきました。
-----------------------------------
慶応大学三田キャンパス南校舎ホールに於いて「参加型オープンデータで日本を元気にするシンポジウム」と銘打ち、LODチャレンジ2015キックオフイベントを開催致しました。 会場には150名を越える方々にお越しいただきました。
イベントは前、中に「デモ見学」を挟み、前半はLODチャレンジとスポンサーの方々のお話し、後半は招待者講演と「参加型オープンデータのためのあるべきイベント・コンテスト像とは」と言ったテーマでパネルディスカッションを行いました。
●前半
開催に先立ち実行委員長 荻野より挨拶の後、LODチャレンジ実行委員会事務局の下山よりLODチャレンジ2015の開催について説明させていただきました。
引き続き過去のLODチャレンジで受賞された方、電気通信大学大学の江上様と筑波大学の三原様より講演いただきました。
—————————————————
江上 周作(電気通信大学大学院情報システム学研究科 博士前期課程2年)
「工業分野におけるLinked Open Data活用に向けた取り組み」
三原 鉄也(筑波大学図書館情報メディア研究科 博士後期課程3年)
「POPなLinked Open Data ー “A Little and Big World -Tales of LOD” のケースより」
—————————————————
(発表順、敬称略)
お二人は、受賞後も、LODに関する研究開発を続けておられます。 江上さんは、ねじLODの外部LOD・広義概念とリンクの方法など具体的な構築方法論を進めておられます。 また、三原さんは、ビジュアル構造を表すメタデータモデル、マンガの制作プロセスのモデル化などの取り組みで、研究&産業応用を進めておられます。 まさに若い人ならではの、新しい方向性を示していると思います。
受賞作品については下記のページで紹介しています。
・ねじLOD データセット部門最優秀賞
・A Little and Big World ? Tales of LOD LODプロモーション賞
次にプラチナスポンサーである株式会社朝日新聞社の崎川様、日本アイ・ビー・エム株式会社の石井様、日本マイクロソフト株式会社の渡辺様、NTTレゾナント株式会社の川本様、富士通株式会社の高梨様より講演していただきました。
—————————————————
崎川 真澄(株式会社朝日新聞社)
「未来メディア塾~課題の解決策を記者と参加者がともに探る」
石井 俊介(日本アイ・ビー・エム株式会社)
「超高速開発とAPIエコノミーを実現する「IBM Bluemix」のご紹介」
渡辺 弘之(日本マイクロソフト株式会社)
「インテリジェントクラウド 「Azure」のご紹介」
川本 真稔(NTTレゾナント株式会社)
「「教えて!goo」のQ&AプラットーフォームのAPIのご紹介」
高梨 益樹(富士通株式会社)
「オープンデータ活用への期待 -LOD4ALLご紹介-」
—————————————————
(発表順、敬称略)
●後半
後半では6名の有識者の方々に講演を行っていただいた後でパネルディスカッションを行っていただきました。
以下、登壇いただいた有識者の方々のお名前と講演タイトル、スライドです。 —————————————————
関本 義秀(東京大学生産技術研究所)
「地域拠点の長期的なモティベーション維持に向けたUDCの『チャレンジ』」
奥村 裕一(東京大学公共政策大学院)
「オープンデータからオープンガバメントへ~行政のパラダイムシフト」
長谷川 孝(横浜市政策局政策調整担当理事)
「オープン・イノベーション 横浜の挑戦!」
神武 直彦(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科)
「地域課題を解決するためのオープンデータを用いたアイデアソン・ハッカソン・マーケソン」
栗原 聡(電気通信大学/ネットワークが創発する知能研究会/ドワンゴ人工知能研究所)
「LODと人工知能と社会との共進化」
庄司 昌彦(一般社団法人オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン)
「Open Mind, Open Knowledge, Open Society」
—————————————————
(発表順、敬称略)
ディスカッションでは「参加型オープンデータのためのあるべきイベント・コンテスト像とは」をテーマに、有識者サイドから奥村先生、庄司先生、活用者サイドから三原様、栗原先生、実務者サイドから関本先生、長谷川様、下山で議論していただきました。
「参加型オープンデータのためのあるべきイベント・コンテスト像とは」というテーマのもと、パネラー、tweetからの投稿で様々な意見が飛び交いました。
今後のオープンデータの普及には、「市民、広くはクライアント全員の参加が必要になってくる」との思いから今年度のテーマは決まりました。
また、前回の「オープンデータ・サミット」での多様なパネラーの流れを継承し、今後社会の基盤になるであろう「人工知能」、また実現しなければならない「オープンガバメント」の先生にも参加していただきました。
スタートは、奥村先生の発言、「かなり低いオープンデータ認知度」(よく知っていると回答したのは、自治体では13.7%、民に至ってはわずか回答者の2.6%)でした。コンテスト初めて5年目、「結構知名度がアップしてきて、活動が広がってきたなと」思っていた関係者にとってはガーンと冷や水を浴びせられた形になりました。
改めてデータの「説得力」、「訴求力」に関心しました。
その後、奥村先生が「社会的認知度をどう上げるか?」について、自治体業務との連携、オープンガバメントの目標を強調されました。
また、関本先生の「アーバンデータチャレンジ」は「UDC五カ年計画」を2014年に策定して計画的進めているとのことでした。
作品内容に関しましては、庄司先生の「みんなで取組むチャレンジングなテーマ」、下山事務局長の「オープンデータを趣味として楽しめる人を増やしたい」、具体的には「京都が出てくる本のデータ」、「ししょまろはんの活動」などの話がでました。
その延長で、作品評価に対して下山事務局長の「誰得性」:誰(が) 得(をするのか)の話がありました。この件は庄司先生の「質の高いスモールデータ」、そしてビッグデータ解析のポイント「ロングテール」そして、「Win」など相通じるものを感じました。
横浜市政策局の長谷川様からは、市民、行政、市議、地域紙などオープンデータを取り巻く、ステークフォルダーの発展、そして「オープンデータは無料でならなければならないわけでもない」といった、経済活動を視野に入れたイノベーション戦略の一端を話されました。
オープンデータ活用の面からお話しされた栗原先生は、AIに必要なデータ量は膨大にあることを示され、今後の機械学習、IoTの発展との関係を示されました。
また三原様は若い研究者らしく、市民運動としてのオープンデータ活動(図書館クラスタなど)を注目され、データサイエンティスト関わる研究者の意識として、スパイスを加える「(こういうデータで)こういうことができる」という枠組みを提案する立場を強調されていました。
私自身、今回のイベントでは会場の枠を越えてtweetを介し「オープンデータ」に関する議論を共有出来たことが一番の成果だったと感じます。 当日のtwitterでのつぶやきをまとめたTogetterでも当日の議論の流れ、盛り上がりが確認できます。
LODチャレンジ2015がスタートして、イベントがたくさん開催されています。2016年1月17日の締切りまで、お時間があればいくつか参加して応募してください。あなたも是非、「参加型オープンデータ」を楽しんでください!
LODチャレンジ実行委員 生島 高裕